ポリゴン(Polygon)、日本で拡大するメリットは?
ポリゴン(Polygon/MATIC)はイーサリアムのブロックチェーンを拡張するためのレイヤー2ソリューションとして注目され、ソフトバンク・ビジョンファンドやセコイア・キャピタルなどから出資を受けている。プルーフ・オブ・ステーク(Proof of Stake)のメカニズムを持ち、ポリゴン(Polygon/MATIC)は2017年にマティック(MATIC)の名前で誕生。昨年2021年2月にポリゴンの名称でリブランディングを行った。
イーサリアムを巨大化する大惑星と例えるなら、ポリゴンはその傍らで動く小惑星と言える。プルーフ・オブ・ステーク(Proof of Stake)のメカニズムを持ち、ポリゴン(Polygon/MATIC)は2017年にマティック(MATIC)の名前で誕生。昨年2021年2月にポリゴンの名称でリブランディングを行った。
2021年、それぞれのネイティブトークン(仮想通貨)が流通するブロックチェーンのエコシステムは急激に拡大したが、その成長をけん引したアプリケーションはDeFi(分散型金融)、NFT(非代替性トークン/コンテンツ)、GameFi(ゲーム)という3つのことだ。
日本、ポリゴン・スタジオから注目される
ポリゴンは昨年7月に「ポリゴン・スタジオ(Polygon Studios)」を立ち上げ、開発者を支援する取り組みを強化した。NFT(非代替性トークン)を活用したメタバースやアプリ、GameFiを巡っては、世界中の多くのデベロッパーがさらに開発を加速させようとしている。
ユーチューブのゲーム部門責任者を務めたライアン・ワイアット(Ryan Wyatt)氏が、ポリゴン・スタジオのCEOに就任し、アニメとゲームなどのエンターテインメント・コンテンツを豊富に持つ日本を戦略的・最重要市場の一つに位置づけている。
ポリゴンを採用する4つのメリット
ポリゴンを採用する企業がじわじわと増える日本で、ポリゴンは4つのメリットを生かして開発企業の支援をさらに強めていく方針だ。その4つの特性とは、①EVM(イーサリアムとの互換性)、②速さ(ブロックを生成する速度)、③安さ(NFTなどの発行にかかる手数料)、④「カルチャーレゴ」と呼ばれる、ポリゴンのエコシステムで動く他のプロジェクトとの連携容易性だと、ビール氏はインタビューで話した。
同氏は「ライアンの入社以来、士気が強まったことは言うまでもない。これまでWeb2のビッグテック企業でUIとUXの向上を徹底的に研究してきたプロが、次世代のWeb3の領域でそのノウハウをフル活用することは、新しいエコシステムを作り上げようとしている中でとても重要だろう」と付け加えた。
所有権がユーザーに移ることで、プラットフォーマーと呼ばれる巨大企業や政府機関など中央集権型のWeb2における「ゲートキーパー」から権力や資金が離れていくといわれている。
「イーサリアム・キラー」と呼ばれる他のレイヤー1チェーンも、開発者を支援するイベントを各国で開くなどして、チェーンをアプリ開発企業に採用してもらう動きを強めている。
ソラナブロックチェーンのソラナ財団(Solana Foundation)は5月に東京で、5日間におよぶ開発者イベントを開き、ソラナチェーンの特性をアピールした。
一方、ポリゴンは、日本市場でチェーンをより浸透させる体制を整備したと言える。エンタメ領域に特化したポリゴン・スタジオを組成することで、日本企業による次世代ゲームの開発をハンズオンで支援できる環境を整えていると、ビール氏は説明する。
例えば、ゲームの中での利用用途を持つトークンが組み込まれているPlay-to-Earn型(プレイしてトークンを稼ぐことができる)のGameFiを開発する場合、そのゲームで使えるトークンを取り扱っているDEX(ノンカストディアルの暗号資産交換サービス)が必要になってくる。また、コンテンツの一部がNFTになっている場合は、ゲーム向けのUXを提供するためのウォレットも必要になる。
その際、ポリゴンの強みであるカルチャーレゴを通じて、ゲーム開発企業はポリゴン上で展開するDEX等との連携をスムースに進めることができるという。
ポリゴンの見通し・将来性
イーサリアム上の取引量が急増したことで取引処理スピードが下がり、手数料(ガス代)は高騰した。いわゆる「ガス代問題」は結果的に、ポリゴンの利用ケースを増大させてきた。
現在、プルーフ・オブ・ワーク(Proof of Work)を採用してきたイーサリアムは、Proof of Stake仕様のイーサリアム2.0に移行する大転換プロジェクトを進めている。エネルギー消費が大幅に抑えられ、処理能力の強化が期待されるプロジェクトが完了した時、小惑星のポリゴンはどうなってしまうのか?
ビール氏は、「(2.0への移行で)イーサリアムはもちろん、決済レイヤー(Settlement Layer)としての信頼をさらに増していくことになる」とした上で、「多くのゲームアプリで発生する膨大な量の取引はポリゴン上で継続して行われるようになるだろう」と述べる。
また、ポリゴンは昨年からチェーンのスケーラビリティをさらに拡大させる施策として、ゼロ知識証明を活用したソリューションの開発を強化していると、ビール氏は言う。今後、ピアーツーピアが中心のWeb3.0の世界でユーザー規模を拡大する際、このゼロ知識証明の存在が重要になってくるという。
ゼロ知識証明とは、暗号学において、個人が他の人に、自分の持っている命題が真であることを伝える時、真であること以外の知識を伝えることなく証明できる手法のことを言う。
例えば、特定のウェブサービスにログインする際、ユーザーはパスワードを入力する代わりに、パスワードを知っている事実の証明を送る。また、本人確認を行う際、ユーザーは第三者に母親の旧姓などを伝達する代わりに、自分が本人である事実の証拠を送る。
ポリゴンを採用する日本企業
ポリゴンを採用する企業は、日本でも見られるようになってきた。NFTの取引サービスを運営するSBIホールディングスや、音楽配信サービスを手がけるレコチョクなどがユーザー企業リストに含まれる。
また、自民党の青年局が5月に、NFTを会議などで配布する計画を明らかにして話題となったが、そのNFTの発行にはポリゴンが利用されると言われている。
「私たちはあくまでも企業や開発者をサポートする立場。ブロックチェーンをうまく活用して、そのエコシステムに存在するサービス同士が容易に連携できる環境を日本でも作り上げていくことが大切だと考えている」とビール氏は言った。「Web3の世界で日本企業が勝ち続けられる土台になっていきたい」と付け加えた。
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