米CPI発表後の仮想通貨相場はどうなる?
仮想通貨相場は、10日に発表された米CPI(消費者物価指数)が予想を下回ったことで、激しいインフレはピークを過ぎ、米FRB(連邦準備理事会)は今後数カ月で金融引き締めを減速させるだろうとの希望的観測から上昇した。だが一部のアナリストによると、こうした希望的観測は見当違いであり、強気相場が続くと考えていた人は失望するかもしれないという。
7月の米CPIは前年同月比8.5%上昇、6月と動揺の数字FactSetが調査したエコノミストによると、7月のCPIは前年同月比で8.5%上昇、引き続き高いものの、事前予想の8.7%を下回った。食品とエネルギーを除いたコアインフレ率は5.9%、こちらも予想の6.1%を下回った。
仮想通貨ビットコイン(BTC)はCPIの発表後に上昇し、11日早くに6月13日以来の高値となる2万4744ドルまで上昇した。
コアCPIとコアインフレ率への注目
ブラックロック・イベストメント・インスティテュート(BlackRock Investment Institute)のジーン・ボイバン(Jean Boivin)氏は、コアインフレ率に注目している。
同氏はCPI発表後に「過去2回のCPIを見ると、コアCPIはまだ年率6%のペースで推移している。インフレ率を2%に戻すためには急激な成長が必要だというトレードオフをFRBが認めることを待っている」とツイートした。
「我々は、FRBはいずれ方向転換すると予想している。だが、コアインフレ率が依然として高水準になっていることが、市場が過度に楽観的になっていることを表している。つまり、今回の上昇は追うべきものではなく、今後一段とボラティリティが高まると考えている」(ボイバン氏)
仮想通貨運用会社Blofinのグリフィン・アーダーン(Griffin Ardern)氏は「流動性への圧力は遠い将来には緩和されると予想される。だが今ではないことは確か。さらに流動性への圧力はまだ高まっているため、仮想通貨市場の上昇はブルトラップ(強気相場の罠)のように思える」と述べた。
ミネアポリス連邦銀行のニール・カシュカリ(Neel Kashkari)総裁は、FRBがインフレに対する「勝利宣言を行うことはまだまだ遠い先のこと」と述べた。総裁のよると、政策金利を年末までに3.9%、2023年末までに4.4%まで引き上げるというFRBの現在の戦略を変更し得るものはないという。政策金利は2.25%~2.5%の範囲にあり、FRBはまだ半分しか利上げしていないことになる。
Genesis Global(ジェネシス・グローバル)のマーケットインサイト責任者ノエル・アチェソン(Noelle Acheson)氏も同意見。コアCPIは高止まりし、FRBの方向転換にはまだ数カ月かかるだろうと述べた。「10日のデータは、FRBが利上げを緩和することを意味するものではない。コアCPIが低下することが必要で、おそらく数か月先だろう」。
FRBが行う量的引き締めの影響
FRBが現在行っているバランスシートの縮小、いわゆる量的引き締め(QT)は、過小評価されているが、しばしば利上げの強力な姉妹とされる。だが、利上げを中心とした市場の議論ではあまり注目されていないようだ。
FRBは9月から量的引き締めを月900億ドルまで加速させる予定だ。
「量的引き締めは、誰もが認識しているが敢えて口にしない重要な問題」とDecentral Park Capitalのリサーチャー、ルイス・ハーランド(Lewis Harland)氏はコメントした。
「FRBのバランスシートの変化率はビットコインの価格推移と相関しているので重要だ」(ハートランド氏)
仮想通貨相場の動き
最近の仮想通貨市場の上昇は、少なくともイーサリアムのPoS移行「Merge」に対する楽観論が一因となっている。the Merge(ザ・マージ)は9月に予定されており、仮想通貨市場から弱気なマクロ要因を取り除く可能性がある。
「CPIに対する株式市場の反応は、合理的というよりも感情的なものに感じられた。一方、仮想通貨市場の反応は、一部には安堵感からの上昇もあるが、the Merge(ザ・マージ)や一部のDeFiプラットフォームの注目すべき進展など、仮想通貨特有のストーリーが強まっていることが推進力となっている」とアチェソン氏は述べた。
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